のびパパ軽井沢日記:#13 浅間山噴火による巨大な火山石は・・・

 

 朝方まで残っていた雨が上がり、久しぶりに青空が広がった2021年9月9日の午後、恒例の100分散歩に出かけた。
 予定とおりというべきか、あちらこちらで別荘や住宅の新築工事が再開している。

 軽井沢町では毎年、夏を迎えると関係者に「工事自粛」を呼び掛けている。
 たとえば今年も、公式ホームページに7月1日「夏季工事の自粛にご協力ください」と題して、次のような呼びかけを掲載していた。

軽井沢町では、静養に来られる方の静穏の保持や、工事車両による渋滞発生の抑制のため、工事の自粛期間を定めております。
 関係する皆さんのご協力をお願いいたします。

 夏季工事の自粛期間:7月25日~8月31日

 (以下、略)〉

 昨年と今年は「コロナ禍」により来訪者が極端に少なく、地獄のような交通渋滞は発生していない。だが、例年の混乱ぶりを知る身としては、これは必要な措置だ、と納得している。
 また、都会の喧騒を離れて、静かに避暑生活を楽しみたい人々にとっては、工事車両の行きかうさまや工事音による静謐破壊は、できれば避けてもらいたい、というのも首肯できるところだ。

 かくて9月に入り自粛期間が終了し、あちらこちらで工事が再開している、というわけだ。
 もちろん、すでに外装は完了していて内装にとりかかっているところもあれば、ようやく外装にとりかかった、あるいは土台のコンクリート工事が完了したところで中断していた、というところもある。
 中には、開発業者が土地造成の段階から作業を再開していると見られるところもある。

 今日、あまりの気温上昇(昨日より10℃上昇!)にTシャツ1枚になって歩きながら見かけたのは、写真のように土地を掘り返している過程で大量の、きわめて大きな火山石を掘り出し、とりあえず隅っこに積み上げている工事現場だった。
 のびパパは、あぁ、これだな、と思った。

 2021年7月17日本欄に掲載した『のびパパ軽井沢日記:#1教えたくないけど、知ってほしい「軽井沢観光スポット」で紹介した昭和天皇行幸時に詠まれた歌とは、まさにこのような光景を目にしてのものだったのではないだろうか。第三の「大日向村」開拓に汗を流していた「田人」は、松の根と浅間山噴火による火山石を掘り返し、耕作できる土地にすべく奮闘していたのではないだろうか?

 浅間おろし つよき麓に かへりきて
  いそしむ田人 たふときもあるか

 そういえば30年ほど前、こういうことがあった。
 ニューヨーク勤務時代の話である。
 前任者が雇用したオイルトレーダーたちが起こした会社は、軽油などの卸売りを生業としていたが、ある日、フィラデルフィアの古い製油所を買収したいと言ってきた。だが、調べてみると、資産譲渡が完了したその日から、すべてのリスクは買い手側が請け負うことになっている。
 環境汚染に対する認識が、今と比べるとほとんどない時代に建てられた製油所である。操業開始後、何十年もが経過している。これまでの期間、いつ、どこで、どのような漏油があったのかわからない。土地汚染の可能性は極めて高いが、その「程度」は知れない。記録もないので、調べようもない。それで「無限責任」を負う訳にはいかない。
 当然、却下した。

 土地には歴史がある。
 そこで暮らした人々の生活の跡がある。
 良きにつけ、悪しきにつけ、我々はその歴史の上で生きていかなければならない。

 あの巨大な火山石、いつの日かどこかの別荘の庭に置かれることになるのだろうか。